光のもとでⅠ

「翠葉を産んで良かった……」
「うん、あのときがんばってくれてありがとう」
 翠葉は二回の切迫流産を乗り越えて生まれてきた子だ。
 碧はそのたびに出血を起こし、痛みや不安と闘っていた。
 初産の蒼樹を産むときとは違う不安を抱えていただろう。
 それでも、蒼樹を目の前にすれば、「お母さんは強いから大丈夫っ!」と笑って見せた。
「俺たちはあの子に教えられることがすごくたくさんあるよね。……健康な身体ではないかもしれない。でも、そうでなくても幸せになれる方法を見つけてあげたいし、見つけてもらいたい。ありのままの自分を好きになってもらいたい。そう思うのは俺のエゴかな」
 イヤホンを外し、祠に向き直る。
 俺たちはいつだってここで神頼みしかできなくて、翠葉自身に何をしてあげられるわけでもなかった。
 なんで今年だったんだろうか、と思うことも何度もあった。
 この仕事にしても翠葉の病状にしても、何もかも。
 全部があり得ないタイミングで重なった気すらした。