隣の奥さんを盗み見ると、表情が少し緩んだように思えた。
「……碧?」
 すべてを聞き終えてから、一筋の涙を流した奥さんに声をかける。
「翠葉はこういう子なのね……」
「え?」
「私たちが前にいてもいなくても、どんなにつらくても身体を責めても私たちは責めない。そういう子なのね」
 なんで気づかなかったかな、俺――。
 言われてみれば、「どうしてこんな身体なのか」と身体に対しての不満は口にしても、俺たち親のことは一言も口にしなかった。
 ただひたすら、自分の身体への不満をどうしたいいのか教えてくれ、とそう訴えていた。
「いかん……俺、前々からすごくいい子だということは知っていたんだけど、今のを聞いてさらに誇らしくなってしまった。どうしようかな……周防ちゃんに会わせて思い切り自慢したい」
 こんな悲痛な声を聞いたあとだというのに、あの締め付けられるような思いがどこかに飛んでいってしまった。