座っていた碧を立たせ、その肩を優しく抱き寄せる。
 一時よりはいい。
 今はきちんとご飯も食べられているし、こんな状況下であっても吐くこともしていない。
 それでも、まだ細い――と背中に手を回し思う。
「どうする?」
「……聞くわ」
 碧は立ち上がったものの、俺にしがみついている状態だった。
「じゃ、座って聞こうか。あまりのショックにひっくり返らないようにね」
 いつも座る石に腰掛け、碧とイヤホンをひとつずつ耳に装着する。
 これは夏に蒼樹たちが使っていたボールペンを使っての録音だった。
 つまり、遠隔にてタイムラグありの盗み聞き。
 翠葉は知らないし、まさか会話が筒抜けだとは思っていないだろう。