光のもとでⅠ

 唯は十九歳のときに両親と妹を事故で亡くしている。
 血縁者という血縁者もおらず、専門学校で身に付けた技術をハッキングという違法な手段で駆使し、生活の糧を得ていた。
 それこそ、何人もの女の家を渡り歩くようなその日暮らしをしていた。
 あのとき、秋斗様に引き上げられなければ今もそんな暮らしを続けていただろう。
「若槻、良かったな。蔵元みたいなのが身元引受人になってくれて」
「……感謝しています」
 小さな声で口にした。
 仕事は秋斗様並みにできるものの、こういうところはまだ子どもの様相を残している。
 実際、事故とはいえ、一家心中のようなものだったという。
 心臓を患っていた妹は確か十七歳で芹香(せりか)ちゃん。どうやら小さい頃から入退院を繰り返していたものの、最終的には心臓移植が必要だったらしい。
 が、家には金銭的な余裕がなく、娘をひとりで死なせるのがつらい、と三人車に乗り、両親が無理心中を図った、というものだった。
 彼らは、ここから一時間ほど走ったところにある幸倉峠と呼ばれる山の崖下で発見された。
 当時の新聞をいくつか見たが、それは悲惨なものだった。
 唯に残された手紙には、「唯は賢いからひとりでも生きていける。父さんと母さんを許してくれ」という言葉のみだったという。
 あまりにも惨い……。
 両親は保険金が下りると考えていたようだが、父親の自殺だけでは済まず、母親も自殺扱いになり生命保険が下りなかったのだ。
 結果、十九歳の唯にはノートパソコン以外は何も残されず、父親名義の賃貸アパートも程なくして追い出されたのだとか……。
 ただ、その日その日をどう生きていくか――。
 そこにしか意識は向かなかったという。そのときの唯が自棄になったとしても仕方のない状況だと思った。