光のもとでⅠ

「窓ぜんかーい……」
 適当な力加減で窓をスライドすると、不必要なくらい大きく開いた。
 外と部屋を隔てるものがなくなり、淀んだ空気が一掃される。
 まだ平気といえば平気だが、そろそろ長袖のシャツ一枚では肌寒いと感じる季節。
 夏は梅雨に苦しめられ、冬は寒さからくる痛み。
 春は急激な気温変化で血圧が安定しない。
 それでも彼女は四季があるこの国を好きだという。
 梅雨は緑のきれいな季節だから嫌いにはなれないと言っていた。
 雨も太陽もどちらも植物には必要で、春には春らしい柔らかな光のもとで花が咲き、新芽をつけた植物は梅雨の雨で根に水を得る。そうして、太陽の恵みを得てぐんぐんと成長する。
 秋の植物は、花とは違う形で人の目を楽しませ、冬に少し休めば春にまた花を咲かせる。
 桜の木の前に立ってはこんなことを教えてくれた。