光のもとでⅠ

「交互にやると目の腫れも顔の赤味も引くのよっ」
「あぁ、そう」
 最後にはしっかりと目薬まで差した。
 なんとも思ってないように答えたけれど、俺も少しだけ変わったんだ。
 君はそんな対処法を身につけなくちゃいけないような場所に身を置いているんだね。
「どれほどつらいことを経験してきたの?」なんて聞いてはあげないけど、察してはあげる。
 虚勢なんか張らずに猿の腕に飛び込んで泣けばいいのに……なんてことを考えるくらいには人間らしくなったと思う。
 いや、同じことを体験したから、かな。
 明らかに自分を好いてくれている女の子に振られるって事態。
 そうなる原因が自分の身内にあったなんてところまで一緒なんだから嫌になる。
「プリンタのインクも忘れずにね」
 ローテーブルに置かれたままのそれを彼女に持たせ、部屋から出した。