光のもとでⅠ

「今後、口にしないでもらえると嬉しいね」
 俺はそんな言葉で翠葉ちゃんが傷つくところを見たくはない。
 もっとも、そんなことがあろうものなら、言われたこと以上に翠葉ちゃんのいいところを並べ立てて教えてあげるけど。
「茜ちゃん。君は自分から動いてもいいんだ。むしろ、猿はそれを待ってる」
「わかってるっっっ――先日、プロポーズされたのよっ」
 おぉ、やるじゃん、猿……。
 だけど、ちょっと悔しいのはなんでだろう?
「高校三年間で久が築き上げてきたものはものすごく大きい」
 そうは言うけれど、君も君でがんばったんじゃないの?
「私のこと丸ごと受け止められるようにって、そこまでしてから迎えに来てくれた。でもっ――怖い……」
 それまでは声に必要以上の張りがあったわけだけど、最後の一言は消え入りそうなくらい小さく、震えた声だった。