「私、あのあと司に会いに行ったの。そしたら、秋斗先生が言ったとおりだったわ。私はただ一方的に話をして、司は相槌を打つこともせずに話を聞いていた。なんのリアクションもなかったけど、ちゃんと聞いてくれているのはわかった。途中で口を挟むことも自分の主観でものを言うこともせず、同情するような言葉も視線も一切なし。ただ面倒くさそうに私の隣に座って地面を眺めてた。話し終わって帰ろうと立ち上がった私に言った言葉が今でも忘れられない」
「……なんて?」
「先輩、蟻の巣を踏みますよ」
 そう言って彼女はクスクスと笑い始める。
「なんとも、我が従弟らしくて恐悦至極、とでも言わせてもらいましょうか」
 あまりにも司らしくて俺の表情も緩んだ。