けれど、俺はしょせん第三者。
 当事者にしかわからないこともあるだろうし、自分の素行を考えればそんな正論染みたことを言える人間ではない。
 この子の母親は今でもその男が好きで、その男の目を引きたいがためにこの子をコンクールに出しているという。
 もっとも、この子自身も父親の視界には入りたいみたいだけれど、それ以前に母親に見てほしいってところかな。
 あの言葉は周りの大人に刷り込まれた何かによって彼女の心に根ざしたものなのだろう。
「頼りにならない秋斗先生からひとつ提案があるんだけど」
「何……?」
 彼女は怪訝そうな顔をした。