司たちが出ていったあと、窓際からの視線に身体を向ける。
「で、茜ちゃんはインク以外に何かご用?」
「大した用じゃないんですけどね」
 にこりと笑う様はどこにでもいる普通の女子高生。
 けれど、彼女は未来を渇望される歌い手でもある。
 まだどっち方面に身を振るのかは明らかにされてはいないけど。
「意外でした」
「何が、かな?」
「司に対するアドバイス」
 アドバイス、ね。
「大丈夫ですよ、司は大丈夫」
 茜ちゃんは言いながら、今はもう閉まっている厳重なドアに視線を向けた。