「ムカつくな……」
「ごめん。私、何かした? ……というか、ツカサは休憩取った?」
 隣の席でフォーマットと前例をいくつか見ながら作業していた翠が慌てだす。
「いや、翠に対して言ったわけじゃない。それから、休憩はもう取った」
「げ、じゃぁ何? ムカつくの対象って俺っ!?」
 優太がテーブルから身を引く。
「あぁ、そうかもな。ちょうど目の前にいたし」
 適当に答えただけだが、優太は濁点だらけの「すみません」を口にして平伏した。
 ゴツ、とそれはそれは結構いい音がしたわけだけど、
「優太、それ……愉快にも不愉快にも見える」
 顔を上げた優太は「本当にごめんなさい」と背筋を正し、作業を再開した。
 俺は――当然のようにここにいる。
 それは翠がいてもいなくても何も変わらなかっただろう。