「翠葉ちゃん、司が迎えに来たよ」
「……ん。……う……は?」
「……それ何語?」
 訊くと、パチパチと瞬きをした翠と目が合う。
「おはよう。よく眠れたようで何より。もう六時半だけどね」
 笑みを添えてゆっくり話すと、
「わ、嘘っっっ――」
 翠が飛び起きた。
 バカだ。
 こういうところ、学習能力が全く生かされてなくて本当にバカだと思う。
 翠は焦点の定まらない状態で、反射的に何もない宙に手を伸ばす。
 その手を掴むと、翠の身体がぐらり、と俺の方へ傾いだ。