「笑っていたのに……」
 起案書を任せたら嬉しそうに笑っていたのに。
「感情の起伏が激しいみたいだね」
 秋兄が翠の顔を見下ろしながら口にする。
 感情の起伏なんて誰にでもある。
 要は、それをどのくらい己の力でコントロールできるか、だ。
 翠は考えていることがすぐ顔に出る。
 ある意味、ものすごくわかりやすい人間で、とても素直な人間。けれど、それだけではない。
 違う一面もある。
 抑えつけて抑えつけて抑えつけて――これでもか、というほどに抑えつけられた感情を持ってもいる。
 プレッシャーという意味ならば、俺や佐野、海斗にだってある。
 期待という重圧、それから己の中にある勝敗に対する恐怖心。