っていうかさ、この人何日ここに居座るつもりなんだろう……。
「ちょっと、秋斗さん……」
「んー?」
 ソファに横になり険呑な返事を寄こす男は俺の上司――俺を捕獲してまんまと会社で働かせている男、藤宮秋斗二十五歳。
 えっらい人目を引く容姿にとてつもない頭脳を誇り、この俺を使いたい放題使っては社会ってものに貢献させてしまっている信じられない人。
 一緒に歩いていて女に声をかけられなかったためしがない。いや、俺ひとりで歩いていても声はかけられるんだけど……。
 その男はさっきから携帯を充電器に繋げたままなにやらモバイル操作を駆使している。
「何、連日居座ってんですか……。暇なら仕事手伝ってください」
 そう、この男――俺の部屋に転がり込んで早二日だ。
 俺の部屋といっても、ホテルの一室なんだけどさ……。
 俺の仮住まいはウィステリアホテルの一室、三十九階フロアの片隅にある二十畳ほどの部屋をあてがってもらっている。
 ここは俺の住居兼職場みたいなもの。
 日中、必要なときはホテルの事務所にも下りるけど、基本はオーナーの直轄――メインコンピューター近くで仕事をしていることが多い。