いつもなら、六時ジャストに開くドアが開かなかった。
 気にしつつも片付けなくてはいけない案件に目を通す。
 少ししたら、優太やほかのメンバーが図書室へ戻ってきた。
「あれ? 翠葉ちゃんは?」
 優太がテーブルに揃っている資料に目をやり訊いてくる。
「まだ」
「嘘っ……あり得ないだろ? 翠葉って絶対に六時前にはあのドアの向こう側でスタンバイしてるじゃん?」
 海斗の言ったことは、皆が思っていたことだろう。
 休憩するように、とあの部屋へ押し込めても、どんな気持ちで秋兄のいるその部屋に押し込めても、翠は中途半端に休んで戻ってくる。
 秋兄がそこで何かを仕掛けているとは思っていない。
 たぶん、翠自身の問題――。