彼女に教えてもらったとおりにお茶を淹れる。
 カップを彼女の前に置くと、彼女は「嬉しい」を引き摺ったまま「ありがとうございます」と口にし、カップに手を伸ばした。
 両手でカップを持つのは彼女の癖。
 何度かふーふーと息を吹きかけ、顔の筋肉を緩めてお茶を口にした。
「本当に嬉しそうだね」
「はい」
 彼女は嬉しさを隠さない代わりに、少しだけ恥ずかしそうな顔をした。
 そんな彼女を存分に堪能している俺の視線に気づくと、彼女は下を向き、髪の毛で顔を隠してしまう。
 もう少し加減してチラ見していたら、あと少しくらいは長く見ていられただろうか。