頭に手を置いたのは、大きな目に見られたままじゃ言えそうになかったから。
 翠葉の視線を逸らすために取った行動。
 なのに翠葉は少しも疑うことなく、「本当?」と、曇りないガラス玉みたいな目を向けてくる。
 俺は罪悪感から、「たぶん」 と答えた。
 さらにはごまかし強化で隠蔽処置。
 再度翠葉の手を取り、「戻ろう!」と半ば強引に手を引いた。
「うん。話、聞いてくれてありがとう」
 はにかんでお礼を言われて、「ごめん」と思う。
 俺はいつでも翠葉の味方だけど、実は秋兄と司のどっちが好きかなんて、ずっと答えが出なければいいのに、と思っているから。
 自分が真面目に恋愛を考えたとき、「三」という数がひどく疎ましいものに思えた。
 譲れない想いがあって、なくしたくない関係があって、どれもが大切で――。