六時を回ればドアの向こうでスタンバイしていたんじゃないか、というくらいにしゃっきりとした翠葉が出てくる。
 これもいつものこと。
 眠そうな顔をして出てきたことは一度もない。
 ちゃんと休めているのか不安に思うものの、その顔をじっと見れば「ちゃんと休んできたよ」と苦笑つきで言われてしまう。
 鈍いくせにこういうところだけやけに鋭くて困る。
「この金額の充当だけど――」
 周りの人間が「おかえり」と声をかける中、司だけはそんな言葉で翠葉を迎えない。
 それがきっと司の気遣いであり、優しさ。
 そんなことがわかる人間が何人いるのかな。