光のもとでⅠ

 本当は、彼女がこの部屋にいるこの時間はすべての仕事を放棄してしまいたいくらいだ。
 けど、そうすると彼女が気にするから……。
 だから、根詰めなくちゃいけないようなものではなく、さらっと適当にできる仕事だけに手をつける。
 なるべくパソコンを使わなくていいもの。たとえば、書類に目を通すだとか、サインを書くとか。
 そうして、彼女の寝息が聞こえてくるのを待つんだ。
 彼女の寝息はとても小さいけれど、その音を聞くだけで幸せな気持ちになれる。
 寝息が聞こえてこないときはたいてい眠れていない。
 そんなときには彼女が好きそうな音楽を小さなボリュームでかけることにしていた。
 一昨日、「眠くないから休憩はいらない」と休憩を取ることを拒んだ彼女は、湊ちゃんに「横になるだけでも十分身体は休まるのよ」と言われ、司には「目を瞑るだけでも視神経が休まる」と追い討ちをかけられた。