時計に目をやり、そろそろだ、と思う。
 ドアに視線を移すと、ちょうどインターホンが鳴った。
 タイピングをやめ、「はい」と答えると、彼女ではない声が聞こえてきた。
『姫の休憩時間です』
 滑舌よく聞き取りやすい言葉を発するのは放送委員の男子だろうか。
 ドアを開けると、相変わらず申し訳なさそうな顔をした彼女が立っていた。
 俺はそんな彼女の背を押し、やんわりと中へ促す。
 カウンター内にいた生徒たちにあたたかな言葉をかけられても、彼女の目尻は下がったまま。
 特別扱いが嫌いな彼女は、この休憩時間には納得がいっていないのだろう。
 けど、自分の体調を考えたらこうするしかない。
 そんな境地。