すべてのメールを読み終えると、翠の身体が傾いだ。
 咄嗟に翠の身体を支える。
 力が抜けた、というのが正しいか……。
 翠は支えられたことを気にする前に、ラグに落とした携帯に手を伸ばす。
 大切そうに拾い上げると、まるで宝物のように胸元に携帯を引き寄せた。
 その携帯に秋兄からのプレゼントであるストラップが揺れているからか、秋兄を大切に想っているような錯覚に陥る。
「翠、顔を洗って夕飯まで休め」
「うん。……ツカサ、ありがとう。桃華さんも海斗くんも、ここにいてくれてありがとう。ここへ来てくれてありがとう」
 そう言うと、また目から一筋の涙を零した。