「司様、ご用意できました」
 コンシェルジュの七倉さんに差し出されたのはサンドイッチが載ったトレイ。
「あ、もしかして翠葉に?」
「そう」
 なんとなく、翠は何も食べていない気がしたから。
 昼食を一緒に、と海斗が誘ったとき、翠は薄く笑みを浮かべやんわりと断った。
「私、食べるの遅いから……だから、おうちでゆっくり食べる」
 と。
「ゲストルームに運んでもらうこともできるけど?」
 そう言った俺に、
「あ――朝食っ、朝食少し残しちゃったから、それを食べようと思って」
 まるで思い出したかのように口にした。