「自分、完敗っすっ! っていうか、失礼しますっ」
 空太はそう言うなり、かばんを持ってカフェラウンジを飛び出した。
 空太っ、ちょっと待てよっっっ!
 俺、これから司にトラップ仕掛けなくちゃなんなにのに、おまえ、その前から「完敗」とか言うなよなっ!?
「何?」
 司は怪訝そうな顔で翠葉に返事を求める。と、
「……私も意味がわからなくて」
 次の瞬間にはふたりの視線が俺を捕らえた。
「ややややっっっ、俺も無理っ! つーか、司っ、頼むから夕飯までは休ませてくれっ」
 ノートの表紙が折れたかも、と思いつつもかばんに適当に勉強道具を突っ込んでその場をあとにした。
 エレベーターに乗り、ひとりの空間になってやっとまともに息が吸えた気がする。