光のもとでⅠ

「そんなことないよ。すごく似合ってる。一瞬自分の目を疑うほどにはびっくりした」
 その言葉に顔を上げる。そして、表情を緩めた彼女が口にしたのは――。
「……これを着てきて良かった。年の差はどうやっても埋められないけど、見かけだけでも、と思って……」
 信じられなかった。
「――今日の洋服やお洒落は俺のため?」
 彼女は心底不思議そうな顔をして、「ほかに誰かいましたか?」と訊いてくる。
 それこそ信じられない。
「…………翠葉ちゃんってさ、本当に何も計算してない?」
 思わず訊かずにはいられなかった。
 それに、「え?」と会話を反芻しているような彼女の仕草。
「あぁ、いい。なんでもない。少しでも疑って俺がバカみたいだ」
「……あの、全然意味がわからないんですけど……」
「わからなくていい。そのほうが君らしい。でも――俺は一生翻弄されるんだろうな」
 この子は小悪魔要素を含む天然だと思う。それは、俺をこんなふうに翻弄するくらいには……。