「車に戻って、あの公園に行こう」
 自分の声が自分のものとは思えないほど甘やかに聞こえた。
 腕の中の彼女は、
「あの、公園?」
 と、下から俺を見上げてくる。
「そう。翠葉ちゃんちの裏にある公園」
「どうして……?」
 どうしても何も、そこが始まりだからだよ。
 もしかしたら――もしかしたら受け入れてもらえるかもしれない。
 少なくとも、胸の中にいる彼女は全く嫌がる素振りを見せないし、キスだって普通に受け入れてくれた。ディープキスなんて初めてだったろうに……。
 少し希望の光が見えた気がした。
 この道が光朗道なんて名前だからかな。
 "希望の光"と祖母の名前を掛け合わせた名がついた道……。
 朝陽がきれいに見える道らしいけれど、いつか――彼女とこの道で朝陽を見る日はくるだろうか……。
「そこで返事を聞かせて」
 言うと、彼女はコクリと頷いた。