「あぁ……なんかさ、翠葉ちゃん、『虫唾が走る』って言葉が強烈過ぎて、それしか覚えてなかったみたいでさ、何を言われのか確認みたいに訊かれた」
 ……翠葉さん、そのまま忘却の彼方へ葬り去ってくれて全然問題なかったんですけど。
「そういうところ、翠葉ちゃんらしいよね? 言われたことをちゃんと考えようとするあたり」
「……らしいからしくないか、って言ったららしいけど……」
「訊かれたから話したけど、今にも泣きそうな顔してた。なのに引き止めてごめんね、とか友達にも謝ってねとか。俺のことばっかり気にしてんの」
 そういえば……。
「その友達連中ってどうなってんの? 俺、何も考えずにおまえ拉致っちゃったけど」
「わ、やっべ……聖司たちと一緒だったんだ」
「聖司かぁ……。あいつ、翠葉と話したがってたよな」