今日一日、ずっと翠葉の様子がおかしかった。
 具合が悪いとかそういうことではなく、妙に「周り」を意識して怖がっていたように見えた。
 なんでそんなことになっているのか知りたいのに、訊こうとすると隣の席の空太が勉強を教えてくれと言ってくる。
 だいたいにして、朝から空太と翠葉が一緒の時点で何かおかしいとは思っていたんだ。
 でもって、今それが確信に変わった。
 桃華さん、あの野郎、とっとと教室出て行きやがりましたぜ?
「あっ、ちょっと翠葉っ!?」
 え――?
 気づいたときには翠葉も空太を追いかけて走り出していた。
 ちょっ――!?
「もうさ、絶対に空太は何か知ってるよねっ!?」
 珍しくも飛鳥が管を巻きそうな勢いだ。