紫陽花の先には木の合間に咲き誇る百合たちが待っている。
 白、ピンク、オレンジ――よくこれだけの百合を植えたと思う。話に聞くと、千以上の百合が植えられているのだという。高低差が少しあったり大振りなものと小振りなものと、種類は様々。
 隣から、「きれい……」とため息をもらすような声が聞こえてきた。
「祖母はとくにカサブランカが好きでね。花言葉を小さい頃に教えてもらった。純潔、威厳、無垢、壮大――ほかの花言葉は知らないけど、これだけは今でも覚えてる。……翠葉ちゃんが好きな花は?」
 手をつないだまま、百合が見渡せるベンチに座る。
 この散策ルートのいいところは、ベンチのある場所には木陰があること。
 正直、今日の陽射しは結構強いほうだと思う。それは、時間が時間、ということもあるだろう。
 彼女の体調を気にするも、隣からはこんな返事があった。
「私、ですか? そうですね、桜……かな? あとは小さい蕾のようなスプレーバラ。カスミソウも好き。どれも好きなんですけど――」
「一番は緑、新緑?」
「当たりです」
 ふたりしてくすくすと笑う。
 顔色がとくに悪いということもなく、手が冷たくなるということもない。
 きっとそれらは滋養強壮剤のおかげ。