「翠葉、ピアノはあとにして先にご飯にしましょ」
「はい」
「じゃ、お箸出して」
「うん」
 もう七時になるというのに、今日は唯兄も蒼兄も帰ってきておらす、私とお母さんと栞さんでの夕飯。
「唯兄は?」
「秋斗くんのところで仕事の打ち合わせって言ってたわ」
「蒼兄は?」
「……さぁ、なんだったかしら?」
 聞いていたけど忘れてしまったのか、もとから聞いていないのか。
 宙を見て首を傾げているお母さんからは情報を得られそうにない。