病院から帰ると、栞さんが出迎えてくれる。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「栞ちゃん、今日は夕飯任せっきりでごめんなさいね?」
 顔の前で両手を合わせ謝るお母さんに、
「何言ってるんですか」
 栞さんはにこりと笑顔を返した。
 お母さんは今の今まで私の病院に付き添っていたから、今日の夕飯は栞さんがひとりで作ってくれたのだろう。
 私は手洗いうがいを済ませ、ルームウェアに着替えるとピアノの前にだった。
 いつもならベッドに横になる時間だけれど、今夜だけは集計作業をお休みしていいとツカサに言われたため、夕飯の前に休む必要はない。