会計作業のチェックをしている優太先輩が顔を上げ、
「でも、翠葉ちゃんの歌うものって恋愛ものが多くない?」
 恋愛もの……?
 聞き慣れない言葉に反応が遅れてしまった。すると、
「優太、作業に集中しろ」
 ツカサが優太先輩に釘を刺す。
 けれども優太先輩は作業に戻らず、私の顔を覗き込んで応答を待っていた。
「これ、恋愛の歌だったんですか……?」
 私の一言に周りの人たちが絶句する。
 動作にも表情にも変化がなかったのはツカサだけ。
 数秒遅れて「マジでっ!?」と訊いてきたのは優太先輩。
 私は頷く以外に答えようがなかった。