一階に着けば、もうそこに人影はない。
「で、何? 昨日の今日で笑いにでも来た?」
 香月さんは、まるで自分を嘲るように笑った。
「そうじゃなくてっ――ごめんなさい、謝りに来ました」
「……は? 意味がわからない」
 突き刺さりそうな視線を向けられ、思わず身を引きそうになる。
 でも、伝えたいことがあるからここまできた。
 引いちゃだめ――。
「私は昨日、規約を知らなかったとはいえ、一度は紅葉祭が終わったら生徒会を辞めると言いました。でも、やっぱり辞められません」
「規約上仕方のないことでしょ」
「それもあるけど、それだけじゃないから」
 斜にかまえていた香月さんがこちらにしっかりと向き直る。
 私も佇まいを直し、続きを話す。