その繊細な心に触れたくて、隣を歩く彼女に手を伸ばしそうになる。
「今日、カメラは持ってきてないんだね?」
 行き先は確かに決まっていなかったし伝えてもいなかった。けれど、公園を歩こうと話した時点でカメラは持ってくるものと思っていた。
 その問いかけに彼女は、
「はい……。今日はたくさんお話しをしたかったから」
 ――やめた。
 今は余計なことを考えるのはやめよう。
 彼女と過ごす時間を楽しもう。ただ、普通に……今までと変わりなく。
「ここに植えてあるものはすべて祖父が自分の手で植えたものなんだ。ここは祖母のためだけに作られた場所。だから、今でもここに入るためには祖父の許可がいる。手入れには業者も入れているけど、祖母が亡くなってからはそれに混じって祖父も一緒に植物の世話をするようになった」
 そう――あのじーさんがここを大切にするのは、祖母との思い出が詰まった場所だからだ。そして今も昔もそれは変わることはない。
 彼女はというと、少し宙を見て笑みをもらすとすごく穏やかな表情になる。そして、
「愛されてるんですね……」
 と、ポツリと口にした。