廊下では朝陽先輩が一年生の女の子たちと楽しそうに話をしていた。
 女の子はみんな頬を紅潮させ、目を輝かせている。
 朝陽先輩はツカサと違って声をかけやすい雰囲気だから、こんな光景は日常茶飯事。
 嬉しそうに話をしているのを中断させるのが申し訳なくて、声をかけられずにいた。
 駐車場までひとりで行くことも考えたけれど、待っていてくれた人に何も言わずに行くのは気が引ける。
 それに朝陽先輩の目はすでに私を捉えていた。
 朝陽先輩は話の区切りがいいところで、
「じゃ、俺は巡回に戻るから、君たちもがんばってね」
 手を振って彼女たちを見送った。
「翠葉ちゃんは本当に遠慮屋さんっていうか、気遣い屋さんだね?」
 階段を下りながら顔を覗き込まれる。
 でも、それは違う……。