「そういう司はあと五分もしたら歌合わせなんじゃないの?」
「……そういうわけだから、悪いんだけど、コレ、俺の代わりに駐車場に届けてほしい」
 ツカサは私を指差してそう言った。
「え? あぁ、翠葉ちゃんを駐車場まで?」
「任せたから。それと、生徒会規約、一部抜粋でいいから話してやって」
「司がすればいいのに」
「バカと無責任に費やす時間はない」
 そう言うと、ツカサは私を見ることもなく三文棟に向かって早足で歩きだした。
 直線の廊下か桜林館の外周廊下に出ると左に曲がり、その背が見えなくなる。
 ――「バカと無責任」、その言葉が胸に痛い。
「翠葉ちゃん?」
 朝陽先輩の手が目の前で上下に動き、慌てて意識を引き戻す。