帰る時間になって連絡をしたのはほかでもない私自身だったし、「着いたよ」という連絡があって、その通話を切ったところで彼女に呼ばれたのだから。
 時計を見ると、それから十五分を優に超えていた。
「わ、ごめんっ――」
 ツカサは何かを言おうとしてやめた。
 もし、口にしてくれたとしても優しい言葉は期待できそうにない。
 代わりに、ため息をついてみせると、
「香月(かづき)さんの用はそれだけ?」
 ツカサは今まで私が話していた人へと向き直る。
 もしかして、声をかける前から近くにいたのだろうか。
 さっきの話の介入の仕方からしてそんな感じ。
 それに、相手の名前を知っているというのはツカサの知り合い……?
 香月さんと呼ばれた人は、びっくりした顔のままツカサに釘付けになっていた。