彼女はふわっと浮いた髪の毛を手で押さえ、耳にかけては薄く笑う。
「紅葉祭が終わったら辞めるの?」
 口を開こうとしたら、それまで存在しなかった声が割り込んだ。
「ふたりには生徒会規約の再読を勧める」
「っ、ツカサ――」
 ツカサはその場にいたもうひとりから私に視線を移すと、
「携帯は?」
 え……?
 咄嗟にポケットを確認してないことに気づき、少し前の出来事を思い出す。
「……あ、教室のかばんの中」
「携帯は所持していないと意味がない。唯さんが迎えに来てる。翠の携帯が通じないって俺に連絡があった」
 唯兄が迎えに来てくれているのは知っていた。