中途半端に生徒会を辞めなくて済むことに心底ほっとした。
 でもね、いつかはこうやって誰かに何かを言われることだって予想はしていたの。
 覚悟はしていたの。
 けど、今はまだ手放せない。
 もう少しだけ待ってほしい。
「わかっているなら早く脱会しなさいよ。生徒会に入りたい人はあなただけじゃないのよ」
 会計の仕事をいつまでも学校外でできるだなんて思ってない。
 紅葉祭が終われば「特別扱い」も終わる。
 だから、今はまだ――。
 ――「人の話は目を見て聞きなさい」
 そう言われて育ったけれど、私の視線は地面に落ちていた。
「ごめんなさい。紅葉祭が終わるまで、それまで待ってもらえませんか?」
 思い切って顔を上げた瞬間、風で周りの木々がさわめいた。