「誰かと一緒にキッチンに立つのって、この家にきてから俺の一スタイルなんだよね」
 にこりと笑えば唯兄のKO勝ち。
 お弁当はお母さんと唯兄が交代で作ってくれている。
 小さなお弁当箱だから詰めるのが大変なのに、それでも品数多く詰めてくれていた。
 そのほかにも小さなサーモスタンブラーに野菜のドロドロスープ付き。
 どうしても食べられないときはスープだけでも飲むように、と。
 優しさが端々に感じられて嬉しかった。
 申し訳ない、ではなく、幸せだと思えた。
 栞さんがゲストルームへ来る回数は減ったけれど、夕飯はお母さんと一緒に作って夜は一緒に食べる。
 そんな日々が続いていた。
 病院の日はお母さんが送迎をしてくれ、歌合せの日は唯兄が迎えにきてくれる。
 朝は相変わらず蒼兄と一緒に車での登校。