「若槻くん、私、翠葉ちゃんを連れて学校へ行ってくるわね」
「了解。リィ、診察を受けて安心しておいで」
 そう言われた十分後にはマンションを出ていた。

 学校へ行くというのに私は私服だった。
 違和感を覚えつつも人目にはつきたくなく、授業中の時間帯に学校へ行った。
 栞さんは私を安心させるように、
「車は職員駐車場に停めるわ。そこからなら、体育館脇は通らなくちゃいけないけれど、クラスで授業を受けている一、二年棟の前を通らなくて済むでしょう? 図書棟の一階でスリッパを借りて行きましょう」
「……ありがとうございます」
「……迷惑だなんて思ってないわよ?」
「え……?」
「むしろ、不安だと思っていることを話してもらえて嬉しかった」
 栞さんは嬉しそうに笑うから不思議でならない。