「栞さんっ」
 リビングを掃除していた栞さんがびっくりした顔で振り向いた。
「どうかした?」
「私の脈って、今どれだけ悪いっ!?」
 不安で栞さんの腕を両手で掴む。
 早くこの不安をどうにかしたくて。
「……翠葉ちゃん、落ち着いて? 私は看護師なの。だから、それは医師である湊に訊きましょう?」
「また入院しなくちゃいけない手前だったらどうしたらいいっ!?」
「翠葉ちゃん、少し落ち着こうね」
 栞さんは身体を抱きしめてくれた。
 不安に泣く私の背をゆっくりと一定のテンポでさすってくれる。
「不安になっちゃったか」
 背後から聞こえたため息混じりの優しい声は唯兄のもの。