『海斗、たぶん、それもあまりない気がする……』
 声が少し遠いけれど、話の内容で誰が話しているのかがわかる。
 声をかけたのは優太先輩だ。
『翠葉ちゃんさ、ここにいるときはだいぶ人の声を耳に入れるようになっていて、全力で集計作業してなかったと思うんだ。それに、嵐子がやらなくちゃいけないファイリング、司が手ぇ放せないときは翠葉ちゃんがやってたし……』
『げっ――それであの集計速度なのっ!?』
 今の声はきっとサザナミくん……。
『そっ。だから、誰にも邪魔されない環境があったらもっと速いと思う。俺はそれを見たい気もするけどね』
 涼やかな目がディスプレイを通して飛んできた。
「……どう? これが俺たちのやり方」
 そう言ったツカサは、今までに見たことがないような顔で笑っていた。
 満足そうに、とても誇らしげに――。