思わず半開きになっていた口もとを押さえる。
『翠葉っ? 歌は翠葉にしか歌えないんだからね? さすがにあの分量は茜先輩ひとりじゃカバーしきれないよ。そこは責任持ちなよ!』
 嵐子先輩の次には久先輩が控えていた。
『歌合せのスケジュールも問題なく変更できたから。火曜日木曜日は午後の授業が終わったらすぐに合わせ。それが終わったら翠葉ちゃんは帰宅。で、自宅で会計の仕事してね。調整済みのスケジュール表は司に渡してあるから』
「これ」
 ツカサがファイルの一番最後を開いた。
「もともと四時から七時までは歌合せのスケジュールになってた。その枠の中で翠の順番を一番最初に持ってきただけだから、文化部側では歌合せに来る人間の順番が変わっただけで、何か大きく変更があるわけじゃない。土日のみ、調整なしのままになってる」
 プリントを見ていると、「翠葉」と桃華さんの声が聞こえてきた。