「いいのよ。翠葉ちゃんどう? 寝てるようならそろそろ起こしましょう。水分も摂ってもらいたいし」
 小さなノック音が聞こえてドアが開いた。
 照明の点いていなかった部屋が明るくなる。
「おはよう。夕飯、これから作るんだけど何か食べたいものはある?」
 栞さんに訊かれて、ほぼ反射的に首を振った。
「栞さん、今日はいいです」
 断ったのは栞さんの背後にいた蒼兄。
「唯が昼に煮込みうどんを作ったんですけど、まだたんまりと汁が残ってますから」
「あら、そう……? じゃ、少し起きて水分摂りましょう?」
「はい……」
「じゃ、ちょっと待っててね」
 五分ほどして戻ってきた栞さんは、トレイに三つのカップを載せていた。