自分の声があまりにも聞き苦しい声だったから、唯兄にお願いしてしまった。
 泣いて叫ぶとこんな声になるんだ、と初めて知った。
 治療中は治療に関することしか話さず、淡々と時間が過ぎた。
 心にあった真っ黒な箱は空っぽになったけれど、不満をすべて口にしたからといって、それですっかり霧が晴れるわけではない。
 これからのことをあれこれ考えたいのに、何ひとつ筋道を立てて考えることができない。
 軸にすべきものまで心から失ってしまった気がした。
 大好きな人たちの顔と「ありがとう」と「ごめんなさい」。
 それしかなくて、いつ治療が終わったのかもわからないような状態でぼーっと横になっていた。
 どのくらい経った頃か、蒼兄に「帰ろう」と声をかけられ身体を起こした。
 着替えを済ませて廊下に出ると、まだ先生たちがそこにいたからびっくりした。
 もしかしたらそんなに時間は経っていなかったのかもしれない。