「……やっぱりおうちで仕事をするよりも、図書棟にいたほうがお仕事しやすいんですか?」
「いや、そうじゃなくて……。リィをかまいたいから、午後の仕事を少なくするために午前に詰め込んでるの」
 喉に何かが詰まるような感じがした。
「でも、怒るっていっても怒鳴るような人じゃないでしょ?」
 若槻さんに聞かれてちょっと困った。
 ふたりは詰め寄るような体勢はすでに解いていて、あぐらをかきつつ話を聞いてくれる感じ。
 でも、お仕置きの内容を話すのはものすごく恥ずかしい。
「あの……あのね……。あの――」
 不思議そうな顔をしている蒼兄に対し、若槻さんはひとりため息をついた。
「リィ、いいよ。どうせキス攻めにされたかなんかでしょ? リィが相手ならそれが関の山」
 サラッと当てられてしまう。
 恥ずかしく思いながらも蒼兄の顔色をうかがう。と、
「翠葉……かわいそうなくらいに顔が真っ赤。それじゃ、はいって言ってるのと変わらない」
 言われてさらに顔が熱くなる。
「はぁ……あの人、禁欲生活始めてどのくらいなんだろう?」
「……俺が知る範囲だと五月半ばから、かな」
「なるほどね」
 全く話の中身が見えない。
「約一ヶ月か。意外と耐えてるじゃん」
 若槻さんは面白そうに口にしてラグの上に転がった。