ゲストルームに着いてすごく助かったのは、
「秋斗先輩はあっち」
「秋斗さんしばらく立ち入り禁止」
 と、蒼兄と若槻さんが秋斗さんの入室を却下してくれたこと。
「ほぉ……人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られるって知ってるか?」
 秋斗さんは応戦する気満々だったけれど、それよりこっぴどく客間への入室を却下したのが蒼兄と若槻さんだった。
「で、今日の一時前頃、何があったのかな?」
 引きつり笑いで蒼兄に訊かれる。
 一時前――。
「あ……――えと……」
「「うん」」
 蒼兄と若槻さんがふたりしてベッドに乗り出してくる。
「……秋斗さんの家へ移動するとき、どうしても抱っこされるのが恥ずかしくて――秋斗さんがお部屋を片付けに行っている間に高崎さんに運んでもらってしまったの……」
 その一言で若槻さんがうな垂れた。
「ひーめー……そりゃ、あの人落ち込むっていうか怒るかも」
「……すごく怖かったです」
 蒼兄は額に手を当て、深いため息をつく。
「俺、先輩の本気の相手って見たことないからさ、こんなに嫉妬深いとは思いもしなかった」
「それは右に同じくですけど……。あの人、午後の時間を融通できるように、午前の仕事量半端ないから」
 仕事の内情を知る若槻さんが教えてくれる。