「でも、退院してから一キロ増えたのっ」
 まだ一キロ……。
 でも、徐々に徐々に増やすから、だから――。
「うん、がんばれっ!」
 嵐子先輩に頭を撫でられた。
 そして、さっきつけたばかりのマチ針を外される。
「翠葉、がんばってもとの体重に戻す努力してるんだもんね」
 嵐子先輩はにこりと笑い、
「この衣装、紅葉祭が終わったら翠葉にプレゼントする予定なんだよ。だから、詰めるのはやめよう? ケープを羽織れば脇が少し余ってても人の目にはつかないし、胸もとがそこまでガバガバなわけじゃない。いつか、体重が戻ったときにぴったりになるようにこのままにしておこう」
 そう言って、「ね?」とまたにこりと笑ってくれた。