「その自販機にミネラルウォーターって一種類しかないと思うんだけど、何そんなに悩んでんだか」
「あ、ごめんっ」
 慌ててボタンを押したら苦手なスポーツ飲料を押してしまった。
「私、何やってるんだろう……」
 受け取り口からスポーツ飲料を取り出し、お釣を取ってはまた投入する。
 そして、今度こそミネラルウォーターを押した。
「海斗くん、これ……もらってもらえる?」
「悪い、俺、そんなに焦らせた?」
「ううん、違うの。ただの押し間違い」
 海斗くんは――。
「少し、話聞こうか?」
 図書棟を出ですぐのところにあるテラスに背を預け訊かれる。