「拓斗、くん?」
「お姉ちゃん、顔真っ赤っ! トマトみたい!」
 確かに顔が熱い。もう、やだ……。
 頬を両手で覆うと、手のほうが冷たいくらいだった。
 すると、リビングへ通じるドアではなく、秋斗さんの仕事部屋に抜けるらしいドアからクスクスと笑い声が聞こえてきた。
 そちらに視線を向けると、
「秋斗さんっ!?」
 もうやだ……絶対に全部聞いてたんだ。
「拓斗、あまり翠葉ちゃんをいじめないでくれる?」
 と、拓斗くんの隣に腰掛けると小さな頭に手を乗せる。
 手、大きい……。
 大きいのは知っていたけれど、こうやってみると本当に大きな手であることがわかる。
 拓斗くんはその手を嬉しそうに受けていて、とてもかわいかった。
 腕に絡み付いて秋斗さんにじゃれつく様は、まるで犬が尻尾をはちきれんばかりに振ってじゃれついているように思える。
 拓斗くん、秋斗さんが大好きなんだなぁ……。
「だって、お姉ちゃんかわいいんだもんっ! うちのクラスの女子よりもウブだよっ!」
 初心って――。
「翠葉ちゃん、拓斗に言われてるけど?」
 秋斗さんは面白そうに笑って私を振り返る。
 私は何も答えることができなかった。